中期経営計画を作成した後、そのまま計画終了年まで見直しをせず、作成したっきりにしてしまっている企業が多いように感じます。
事業環境の変化や社会情勢の変化があった場合には中期経営計画を見直すことによって、再度企業がどのような方向性で、どのようなことを目指しているかを明示することができます。
当記事では中期経営計画の見直しの必要性と見直すタイミングをテーマに解説をします。
目次
1.中期経営計画見直しの必要性
中期経営計画は、定期的に計画の進捗状況を確認することが大切です。以下のような理由においては、中期経営計画の見直しが必要になります。
(1)経営陣に大きな異動があった場合
経営陣に大きな異動があり、企業の中期ビジョンや経営方針に変化があった場合には必ず中期経営計画を見直す必要があります。特に代表取締役に異動があった場合には根本から見直す必要があるでしょう。
このような場合にはもう一度経営理念や中期ビジョン、経営方針等を考え直す必要があり、仮に変更がなかったとしても新たに全員で共有することが重要です。
経営理念の成り立ちや経緯、どのような想いが経営理念に込められているのかを確認する必要があります。
また中期ビジョンや経営方針等に関しても前経営陣と新経営陣で今までの中期経営計画との違いやイメージが違う部分がないのかを確認する必要があります。
(2)外部環境に大きな変化があった場合
近年では外部環境も短期間で激しく変化しております。新型コロナウイルスの感染拡大がわかりやすい例ですが、このような場合も見直す必要があります。新型コロナウイルス以外でも地震や津波等の災害も外部環境に大きな変化をもたらします。
その他にも法令や規則が変われば、新たな戦略や戦術を立てることもできますし、また逆の場合もあるでしょう。新技術や新商品・新素材が開発されれば、新たな行動が必要になってくることもありますし、顧客のニーズも変化してきます。さらに販路や物流にも変化が起こることもありますし、新たな競合が参入してくることもあります。
外部環境の変化が激しい時代です。一年前の常識が今は非常識になっていることも多々あります。外的環境に大きな変化があった場合にはすぐに対応し、中期経営計画を見直すことが重要です。
(3)設備投資などの大きな支出が必要となった場合
中期経営計画の途中で特別な理由により、急遽建物や設備の修繕、移転等が必要になった場合又はM&Aや優良物件の発見等により出店、事業所の開設や移転等の大きな変化がおこることがあります。
このような場合には損益計画だけでなく、資金繰り等の収支計画の見直しが必要になります。資金調達はどうするのか、金利は、返済期間は、又何年で回収するのか、会社全体としてどのような影響があるのか等大きな見直しが必要になります。特に資金繰りに関しては何度もリスク計算をして、将来にどのような影響があるかも把握する必要があります。
(4)中期経営計画達成状況が大きくズレた場合
計画が最終期あたりになると、設定した課題が早めに解決していたり、逆に到底達成できない目標が残ってしまう場合があります。
上記の理由も含め、前提が変わってしまったり、達成してしまった計画や不可能と思われる計画を掲げ続けることは、計画達成に向けて日々目標を掲げ仕事に取り組む社員にとっても、その計画を参考にする金融機関や投資家等にとっても、あまり意味を持たないものとなってしまいます。
2.中期経営計画を見直すタイミング
中期経営計画を見直す場合には2つのタイミングが考えられます。
(1)事業環境等に変化があった都度
上記1のように中期経営計画の見直しが必要になった都度、再作成をするのが1つのタイミングになります。ただし、中期的な方向性について全社のコンセンサスを維持する観点からは、計画を頻繫に変更しない方が望ましいため、1年に何回も再作成することはお勧めしません。
(2)毎期決まった月
毎期必ず1回見直し、中期経営計画の再作成を検討するのが1つのタイミングになります。近年は経営環境、事業環境が激しく変化しており、外部的要因、内部的要因など様々な理由により、計画通りに進まないことがほとんどだと思います。
スケジュール化することによって企業のビジョンを再度見直すことができます。
3.中期経営計画の見直し方
中期経営計画の見直し方については2つの方法が考えられます。
(1)現在の中期経営計画をベースにし、現状に合わせて修正
中期経営計画が順調に進み、大きく修正する必要がない場合には、現在の中期経営計画を参考にしな がら数字を積み上げる方法があります。
(2)ゼロベースで一から作成
事業環境等が大きく変化した場合には、再度一からビジョンを描き、逆算で考えて中期経営計画を作成し直すことが重要です。
4.まとめ
企業を巡る経営環境は、日々変化しています。想定した前提が計画策定時と大きく異なったときの対応方針を立てておくことも重要です。前提と現実の相違、相違による計画への影響を分析できるような作り方をすることによって検証や修正をしやすくなります。
経営計画は検証をすることが重要です。ズレていることが問題なのではなく、なぜズレているかがわからないことが問題です。現在、中期経営計画と途中の実績に大きく乖離がある場合には、もう一度中期経営計画を策定し直すことをお勧めします。