中期経営計画とPDCAサイクル

中期経営計画の持つ意義や重要性は広く認識されており、実際に作成している中小企業も少なくありません。しかし、せっかく作った計画を有効に活用できていないケースが多くみられます。中期経営計画が、いわゆる「絵に描いた餅」状態になってしまっては経営の役に立ちません。この状態を脱却するにはPDCAサイクルの構築と運用の仕組み作りが重要です。

 

当記事では中期経営計画を有効に活用できない要因とその対策、そして立てた計画を実行するためのPDCAサイクルとその仕組み作りについて解説をします。

 

1.中期経営計画を有効に活用できていない要因

要因としては下記の3つが考えられます。

(1)中期経営計画の内容が浸透していない

中期経営計画の意義および、計画で掲げた目標と戦略が従業員に浸透していない状態になっていることが考えられます。経営者は、年度初めに中期経営計画を従業員に簡単に発表しただけで、従業員に共有できているつもりになっていますが、実際にはそれだけでは浸透しません。経営目標に対する共感が得られなかったり、目標達成に対する動機が高まりません。場合によっては、経営計画が理想論として片付けられてしまうこともあるでしょう。

(2)戦略から具体的な行動への落とし込みができていない

中期経営計画は戦略レベル、大きな方向性を示すレベルであるため、戦略から具体的な行動へ落とし込みをしないと、従業員は具体的に何をしていいのかわからない状態になってしまいます。

その結果、今まで通りの日々の業務を行うだけで終わってしまい、目標達成につながるような行動に結びつかないケースがあります。ここは次項(3)の仕組みを整えるうえで非常に重要です。

(3)目標管理、行動管理の仕組みが整っていない

中期経営計画に基づいた行動計画に落とし込み、取り組んだとしても、すぐに結果がでないと途中で止めてしまい、目の前の業務を優先し、目標へ近づく行動がとれなくなっているケースがあります。これは中期経営計画は相対的に短期的な業績よりも、中長期的な業績を目標としているため、短期的な業績を重要視する従業員には「余計な仕事」と捉えられてしまうことがあるためです。

2.経営に役立つ中期経営計画にするには

ポイントは下記の3つが上げられます。

(1)経営者が語り続けること

経営者自らが中期経営計画の意義と目標、そして合理的な戦略を自分の言葉で語り続けることが重要です。経営者から管理者へ、管理者から一般社員へと地道にコミュニケーションを重ね、正しく中期経営計画の意義・目的・戦略を何度も伝えていくことです。経営者から直接全社員に伝えていき、言葉だけでなく、経営者自らの行動で示し続けるとより深く伝わります。

(2)行動計画に落とし込むこと

中期経営計画で作成した戦略を、日々の業務活動である行動計画にまで落とし込みをすることによって、やるべきことが明確になり、従業員が具体的に行動をすることができるようになります。従業員の行動や結果も可視化されるため、管理もしやすくなります。

(3)目標管理、行動管理の仕組みを作ること

中期経営計画を作成しても、計画を実行し、検証しないと、立てた経営計画が正しかったのか、目標達成にどこまで近づいているのかわかりません。定期的に現在の状況を確認する仕組みが必要です。

また、社内の評価に関しても、短期的な成果のみを評価するのではなく、中長期的な視点での業務活動を実行したかどうかというプロセスそのものを評価する仕組みも必要です。

(1),(2)については、経営者やその幹部の熱意と啓蒙の仕組みづくり(勉強会や会議体など)が重要になります。しかし、もっとも重要なのは(3)の「目標管理、行動管理の仕組み」です。次節では、「目標管理、行動管理」の仕組み作りについて解説します。

3.中期経営計画で策定した目標を達成させるための仕組みづくり

経営計画書を有効に活用するためには、前項で解説した「目標管理、行動管理」の仕組み、つまりPDCAサイクルの仕組みを構築することが重要です。

(1)PDCAサイクルとは

Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のプロセスを繰り返す一連の流れをいいます。

○Plan(計画)
ゴールから逆算して計画を立てることが重要です。経営数値だけでなく、具体的なアクションプランを作成し、KPI(Key Performance Indicator「重要業績評価指標」の略称で、「事業成功の鍵を数値化したもの」の意)まで設定をするとわかりやすい計画になります。

○Do(実行)
できる限り計画通りに実行することが重要です。日報等で記録しておくとCheck(評価)の時に検証しやすくなります。

○Check(評価)
ただ結果を確認するだけでなく、次に繋がる改善点を考えることが重要です。

・計画通りに実行できていたのか?
・実行した結果良かったこと、悪かったことは?

との観点で振り返りをします。

○Action(改善)

上記のCheck(評価)を踏まえて、次に具体的にどのような行動を起こすのか検討します。そのまま継続するのか又は変更するのか、場合によっては中止の決断をすることも必要です。当初の計画に立ち返り、より計画に近づくためのアクションプランを再度検討することが重要です。

との観点で振り返りをします。

(2)PDCAサイクルの仕組みを構築するためには 

さて、PDCAサイクルの仕組みはどのように構築すればよいのでしょうか。重要なポイントは、①単年度計画を作成すること、②経営計画発表会を開催すること、③計画を検証する会議を定期的に実施すること、以上3点です。

①単年度経営計画

中期経営計画で作成した経営理念、中期ビジョン、戦略、数値計画等を単年度経営計画に落とし込み、月次単位、さらに週単位、日次単位の計画まで落とし込むことによって、より具体的なアクションプランを検討することができます。

単年度経営計画を作成する場合には「5W1H」で考えることが重要です。

When :いつ?どのようなタイミングで? 

Where :どこで?どこに?

Who :誰が?

What :何を行う?

Why :どのような目的で?

How :どれくらいの頻度で?どれくらいの費用で?

以上の要素をできる限り単年度計画に盛り込むことで、実際に従業員の具体的な行動につながることが期待できるのです。

②経営計画発表会

作成した中期経営計画や単年度経営計画を基に、期首に一日かけて経営計画発表会を行い、全社員に会社の未来像、社員の未来像を伝え、方向性や想いを共有してスタートすることが重要です。銀行担当者、支店長、取引先や顧問税理士等を招待すると、より緊張感のある発表会になります。経営計画発表会は経営計画書に書かれている方針や会社への想い、社員への想い、会社の未来像について、経営者の熱い想いをが自らの言葉で伝える場になります。

経営計画発表会は、計画達成に向けて全社一丸となるために有効な手段です。

具体的には

1.経営計画の目的と過去の振り返り

2.前期の数値確認(目標と実績の確認)

3.中期経営計画発表、今後5年間の数値説明

4.当期経営計画発表、各部門の目標説明

5.行動指針、個別方針発表

6.最後の挨拶

のような流れで行います。例えば、その後に第二部として社員一人一人が個人目標を発表する時間を設けると、より充実した経営計画発表会になるでしょう。

③会議の仕組みを構築する

中期経営計画、単年度経営計画はあくまで「P」の役割です。「DCA」まで行って初めてPDCAサイクルが成り立ちます。日々の業務に追われてしまい、計画した通りの行動ができずに、計画倒れになってしまわないようにするためには、経営会議や営業会議等といった行動計画を検証する場が必要になります。毎月又は毎週決まった日時に行動実績を検証するための会議を設定し、習慣づけることが重要です。

この会議は数字や行動実績の達成状況を検証し、改善していくことが目的です。演説会議や報告会議、追及会議にならないようにするために第三者に進行をお願いすることも一つの方法です。

4. まとめ

このように、中期経営計画を有効に活用するためには経営陣の熱意、そして立てた計画を実行するためにはPDCAサイクルとその仕組みを構築することが有効です。変化の流れが激しい昨今、自社を成長拡大させるためにも今一度見直してみてはいかがでしょうか。

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