従業員の資格取得費用等を負担した場合の取り扱い
2022.06.01
【役員報酬の適正額】
1年半ほど前(H26.11.13)に【役員報酬の相当額】という記事にて取り上げましたが、沖縄のある酒造会社が支払った役員報酬が“不相当に高額”かどうかの司法判断が先日4月22日に東京地裁で出されました。
争点となっている「役員報酬」は、毎月の給与である「役員給与」と役員退任(今回のケースでは肩書きが変わったことによるもの)に伴う「役員退職金」の2種類です。
いずれの報酬についても、事業規模の類似する同業種の役員報酬状況と比較して、不相当に高額であるとして税務署は否認していましたが、役員退職金については「不相当に高額ではない」と判断され、納税者側一部勝訴となっています。
役員退職金の算定は、一般的に以下に記載する功績倍率法という算式を用いて計算します。
役員退職金=①最終月額報酬×②勤続年数×③功績倍率
③の功績倍率は「○倍であればOK」という明確な基準がないため、その率をめぐって過去も多くの訴訟となっています。
しかし、今回の訴訟では、一見明確である①最終月額報酬と②勤続年数の部分で考え方が別れた新たな裁判例と言え興味深い判決です。
なお、判決としては、役員給与については類似規模同業種との比較は「近隣」「売上規模が1/2以上2倍以下」の同業他社との比較で行なうことは合理的であると判断した一方、役員退職金については、最終月額報酬を同業他社の平均額と比較するのはなじまないと判断しています。
これは、今回は争点とならなかった功績倍率の功績部分に最大限に配慮したものだと思います。
結果的には、個別事情により判断基準が異なることから、全てにおいて絶対はないというところに落ち着いてしまうのかもしれませんが、そこが税務の難しいところ(税理士としての手腕が問われるところ!!)です。