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2022.06.01
年末調整とは?必要書類や確定申告との違いを解説!
木々も色づき始め、すっかり秋になりましたね。
ということは・・・年末が近い!ということです。
いよいよ、毎年やってくる年末調整の時期となりました。
皆様ご準備は出来ていますか?
今回は年末調整とは何か?年末調整に必要な書類は? などをわかりやすく解説します。
年末調整とは、読んで字のごとく「年末に行う調整」です。では何の調整か?というと、
所得税の調整を行うものです。具体的にいうと、会社が給与所得者に代わって行う手続きのことを指します。
会社員やアルバイトの所得税は毎月の給与や賞与から概算で天引きされ、会社が税務署に納めます。
しかし、天引きされている税額はあくまで概算であり、正確な税額ではありません。
そこで、年末に1年間の給与額が確定した時点で、会社がその年の正しい税額を再計算し、過不足を調整することになりますが、この調整が年末調整となります。
毎月の給与や賞与から天引きされた税額が正しい年税額よりも多ければ還付され、不足していれば追加で納めるという流れです。
多くの給与所得者は、この年末調整によって1年間の所得税の手続きが完了します。
なお、年末に行われる理由は、所得税は暦年(1~12月)の収入・所得ベースに計算されることが決まっているため、年末に計算することが最も効率が良いからです。
年末調整で所得税を計算することができる人は、給与所得者です。
給与所得者とは、会社や企業から給与を受け取っている人で、アルバイトやパートも含まれます。
また、年末調整は会社が計算を行うため、給与所得者のうち、下記の要件を満たす人が年末調整の対象となります。
・その年の12月31日時点で会社に在籍していること(※)
・その年にその会社から給与を受け取っており、かつ、その年最後の給与(年末調整が行われる給与)の支給を受けること
(※)12月31日に在籍していなくても、その年の最後の給与を受け取って退職する人も年末調整の対象とすることができます。
また、会社から役員報酬を受け取っている役員についても給与所得者に該当します。
役員の場合、上記の要件に加えてその支給形態により、年末調整の対象となるか否かが判断されます。
いわゆる常勤の役員(取締役、代表取締役など)で毎月報酬を受け取っている場合は、年末調整の対象、年に一度しか報酬を受け取らない、特定の月だけ報酬を受けるような場合は、年末調整の対象外となります。
上述のとおり、年末調整を行うためには、その年の12月31日時点で会社に在籍している (その年最後の給与の支給を受ける)ことが必要であるため、年の途中で退職し、その後再就職せず、どの会社にも在籍していない人は、年末調整の対象となりません。
また、年末に在籍している・その年最後の給与の支給を受ける、といった年末調整の対象となる要件を満たしていたとしても、以下に該当する人は、年末調整を受けることができません。
・同時期に複数の会社から給与を受け取っている人
・その年に支給を受けた給与や報酬の金額が2,000万円を超える人
これらの人は、個人事業主やフリーランスの方と同様に、自ら確定申告を行い、その年の所得税額を確定させる必要があります。
年末調整は、会社ごとにその計算が行われますので、資料配賦のスケジュールや提出期限は、会社ごとに決めることができます。
ただし、年末に行われるものであるため、多くの会社では、以下のような流れで行われています。
1. 必要書類の配布(10月~11月)
配布書類
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
会社は従業員に、これらの書類を早めに配布し、記入方法も説明します。
2. 書類の提出期限(11月末まで)
従業員は必要書類を記入し、11月末までに会社へ提出します。
この時期までに、生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書など必要な証明書も揃えます。
住宅ローン控除の適用を受ける従業員は、住宅借入金等特別控除申告書を記載し、金融機関から発行される住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を揃えます。
3. 年末調整の計算(12月上旬~中旬)
人事・経理部門は、提出された書類をもとに年末調整を実施します。
税額の計算を行い、所得税の過不足額を算出します。
4. 給与への反映(12月末)
年末調整で過不足していた税額を、12月の給与に反映させます。
還付がある場合には給与に加算、不足がある場合には給与から減算します。
また、会社は、従業員に対して、給与所得の源泉徴収票を交付します。
従業員に対して、給与を通じて税額の精算、源泉徴収票の交付による通知を行った後、会社は、1月に法定調書、給与支払報告書の提出を行うことになります。
年末調整の対象となる者は、勤務している会社に以下の①~④の申告書を提出する必要があります。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
「扶養控除等(異動)申告書」は、日本の所得税法に基づいて、給与所得者が提出する書類で、扶養家族の有無、障害者控除やひとり親控除の適用を受けるために、会社に提出する書類です。
会社はこの申告書に記載された内容に基づいて、年末調整において適正な税額を計算します。
また、扶養親族がいない場合や、各種控除を受けない場合であっても、この申告書を提出することで、各控除の適用を受けない旨を会社に伝える必要があるため、提出が必要になります。
扶養控除等(異動)申告書には、もう一つの役割があり、この申告書を提出した会社から支給を受ける毎月の給与や賞与から源泉徴収される概算の所得税額については、低い金額とすることが認められています。
裏を返すと、この申告書を提出しない場合、会社は毎月の源泉所得税額を高い基準で徴収しなくてはならないため、給与の手取り額が減ることになります。
そうならないように、必ず提出するようにしましょう。
なお、扶養控除等(異動)申告書の提出は、一つの会社にしか提出することが認められていないので、複数の会社から給与を受け取っている場合には、「主たる給与(メインとなる給与)」を受け取っている会社に提出してください。
②給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
非常に長たらしい名前ですが、こちらの申告書では、以下の項目を計算する際に必要となります。
配偶者控除、所得金額調整控除については、該当しない方は提出の必要はありませんが、
基礎控除については、基本的に全給与所得者に係るものなので、必ず提出するようにしましょう。
・基礎控除
所得税では、一定額を課税所得から差し引くことができる制度があります。適用を受けることができる対象は、合計所得金額2,500万円以下の方となります。
合計所得金額は、給与所得以外の所得も含めて計算することになるため、この申告書に給与所得以外の所得の見積額を記載し、会社に提出することで、適用が受けられる場合には年末調整時に反映されることになります。
なお、令和6年に限っては、定額減税の適用が受けられるかどうかの判定も、この申告書で行うことになります。
・配偶者控除
配偶者がいらっしゃる方については、納税者本人、配偶者の方が、一定の要件を満たしている場合、納税書本人の所得から一定額を控除することが認められています。
年末調整で、この控除を受ける場合には、この用紙に配偶者の所得見積金額を記載し、会社に報告します。
会社は、本人の所得金額とこの用紙に記載された配偶者の所得見積金額から、配偶者控除の適用を受けることができるか否か、控除額がいくらになるかを確認し、控除を受けることができる場合には、年末調整計算時に反映させます。
・所得金額調整控除
この制度は、特定の条件を満たす納税者に対して所得税の負担を軽減するための控除制度です。
子育て中であったり、障害者を扶養している家庭の負担を軽減するために導入された制度ですが、控除額は、給与収入850万円を超えた部分に対して適用されるため、対象となる人は限定的です。
③給与所得者の保険料控除申告書
所得税では、支払った保険料に応じて、所得から一定額を控除することが認められています。
この控除を年末調整時に反映させるためには、この申告書を記載して、会社に提出する必要があります。
また、一部を除き、控除が受けられる保険料であることを証明する書類が発行されますので、その証明書も添付するようにしましょう。
④給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書
いわゆる住宅ローン控除を年末調整にて反映したい場合には、この申告書と金融機関等が発行する、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を会社に提出する必要があります。
なお、住宅ローン控除を年末調整で受けることができるのは、2年目以降になります。
初年度は、確定申告において住宅ローン控除を受けなくてはなりませんので、ご注意ください。
(初年度に確定申告を行うことで、2年目以降に利用できる申告書を受け取ることができます)
年末調整には、いくつか注意すべきポイントがありますので、ご注意ください。
①改正点に注意
基本的には、毎年同じことを行いますが、改正が頻繁に行われます。
今年は改正ではありませんが、定額控除の部分が変わっていたり、上述の基礎控除や、
給与所得控除といった項目は、2022年に改正が行われました。
毎年、国税庁より手引きが発行されますので、最新の内容を確認するようにしましょう。
②提出期限を守る
年末調整に必要となる申告書や控除証明書の提出期限は、通常、会社から指定されます。
この提出期限を守らないと、各種の控除が受けることができなくなるだけでなく、最悪、年末調整自体を受けることができなくなることもありますので、早めに準備するようにしましょう。
なお、保険料の控除証明書や借入金の年末残高等証明書を紛失してしまった場合、再発行をしてもらえますが、発行まで時間がかかる場合もありますので、余裕をもって確認するようにしましょう。
③扶養親族の変更確認
結婚した、子供が生まれた、子供が就職した等の理由で、扶養親族の状況が前年と異なる場合には、申告内容を正確に変更しましょう。
また、年末調整を行う担当者も、計算に間違いが起こらないよう、提出された申告書をしっかりと確認するようにしましょう。
いかがでしょうか。毎年行われる年末調整ですが、何となく済ませてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
年末調整は給与所得者の方にとっては税金のことを考える良い機会です。
ご自身がどのような控除をうけているのか、適用が受けられるのに見落としているものがないか等、改めて確認してみてはいかがでしょうか。