どんな場合に必要?手続き面は?源泉徴収の対象となる報酬のあらまし
2022.03.16
相続税申告で相続財産から控除できる葬儀費用とは?
相続税に関連して、「知り合いから葬儀にかかった費用を相続財産から差し引けるって聞いたのですが、本当ですか。」というご質問を、お客様からいただくことがあります。
上記のご質問の通り、相続税を計算する際に、一定の相続人等が負担した葬儀費用は、相続財産から差し引いて計算することができます。相続税は財産すべてに課税されるわけではなく、亡くなった方の借金や葬儀費用など相続財産から控除できる費用もあります。
今回は葬儀費用を相続税申告で控除するために知っておきたい内容についてご説明します!
結論からいうと葬儀費用は、相続税を計算するときに相続財産から差し引くことができます。葬儀の規模や費用は縮小傾向にあるようですが、葬儀費用は平均で200万円ほどかかるという民間調査結果もあり、高額な出費であることには変わりません。葬儀費用を差し引くのと差し引かないのでは税額が数十万円も変わる可能性があります。
葬儀費用を控除するといっても、相続税額から葬儀費用を直接差し引き、かかった葬儀費用分だけ相続税が少なくなる訳ではありません。葬儀費用は、相続人それぞれが取得する財産の価格から、その人が負担する葬儀費用を引いて控除します。
例えば、Aさんが葬儀費用200万円を負担していたとします。5,000万円を相続していたAさんは、まず5,000万円から葬儀費用200万円を引いて課税価格4,800万円を求めます。この課税価格4,800万円をもとに相続税額を算出していきます。
このように、葬儀費用は相続財産から差し引くことができます。相続税額から差し引くわけではありませんからご注意ください。ただし、葬儀費用と一括りに言っても、差し引けるものと差し引けないものが明確に決まっています。
相続財産から差し引ける葬儀費用の例としては下記があります。
・火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
・お寺などに読経料などのお礼をした費用
・遺体の捜索又は遺体や遺骨の運搬にかかった費用
・運転手さんへの心づけ(火葬場への往復運転などをしてくれた方への謝礼)
・葬儀に関連する飲食代
・お通夜、告別式にかかった費用(お通夜等の参列者に出す食事代や菓子、飲物等も含む)
・葬儀場までの交通費
・お手伝いさんへのお礼(香典等の受付をしてくれた人の謝礼)
・医師の死亡診断書(納骨のために取得した診断書)
・ほか通常葬儀に伴う費用
これらは亡くなった人の葬儀で通常発生してくる費用ですから、相続財産から差し引いて控除することができます。
相続税の申告書に上記の費用を記載するときには、証拠書類として領収書を添付することになります。
続いて、控除することができない費用です。
・香典返し
・生花、盛籠等(喪主・布施負担分は控除できる)
・位牌、仏壇、墓石の購入費用
・法事(初七日、四十九日)に関する費用(葬式と同時に行う場合は控除できる)
・医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用
・そのほか通常葬儀に伴わない費用
上記の項目も人が亡くなったときには必要な費用ではありますが、香典の場合、故人ではなく、遺族へ渡されるもののため、香典返しは葬儀費用になりません。また、位牌や墓石等も直接葬儀には関係がないという理由で控除することができません。
相続税の申告で葬儀費用を申告するのは、それほど難しいことではありません。これまで解説してきた葬儀費用の内容を「相続税申告書」に記入するだけです。
その流れをご説明します。
葬儀費用を控除して相続税を申告するときは、相続税申告書の第13表に記載が必要です。
まず、「2 葬式費用の明細」という場所に支払先の情報と金額、それを負担する人の氏名・負担金額を記載します。
次に、「3 債務及び葬式費用の合計額」の葬式費用の欄に、負担することが確定した葬式費用と確定していない葬式費用をそれぞれ記入し、その合計額を⑥に記載します。
同じく相続税の計算上引くことができる債務の合計額③と先ほどの葬式費用⑥を足した金額が⑦に入ります。
この⑦の数字を第1表の「債務及び葬式費用の金額③」の欄に記載します。
葬儀費用を控除するためには、その証拠書類として領収書を添付することになっています。領収書・レシートが出ない場合はメモやノートでも大丈夫です。
葬儀費用の明細は相続税の申告書の一部です。相続税の申告を税理士に依頼する方は領収書やメモ、ノートを保管をして税理士に渡せばこちらの明細を作成する必要はありません。
相続税の申告書に上記の費用を記載するときには、証拠書類として領収書を添付することになりますが、お布施や心づけのように中には領収書が出ないものもあります。
そのような場合は支払ったことを記録したメモやノートでも領収書の代わりになるものとして控除が認められますが、自己申告になるためメモやノートには支払った相手、金額、日時、用途などをしっかりと記録しておくようにしましょう。
また、通常はもらえる領収書やレシートを紛失してしまった場合も、記録があれば控除が認められます。こうした記録は正確に残すように注意してください。
亡くなってから葬儀までは様々な手続きや対応などで慌ただしくなります。何にいくら支払ったか分からなくなってしまう場合もありますので、葬儀代として支払った費用はすべてその都度記録を取るようにしましょう。
あくまで「通常発生する費用」を控除することが目的です。社会通念上相当という言い方もしますが、常識の範囲内の金額である必要があります。
従って、あまりにも高額な内容のものは控除が認められない可能性があります。
相続では、亡くなった人の財産を無条件に引き継ぐ「単純承認」と、プラスの財産の範囲内で借金返済などの債務を引き継ぐ「限定承認」、一切相続しないという「相続放棄」の3つの選択肢があります。
この中の相続放棄を選択した人の場合、亡くなった人の財産から葬儀費用を払ってはいけないのではないかと考える人もいるかもしれませんが、葬儀に関しては例外として相続財産を使ってもいいことになっています。
ただし、高額な葬儀費用を払っている場合は「単純承認」とみなされる可能性もありますのでご注意ください。
一般的な考えとして、家族が亡くなった際に葬儀を行うことは常識とされていますが、葬儀にかかる費用に関しては被相続人の生前の交友関係や社会的地位、その地域の慣習等によって大きく異なり、高額になる可能性もあります。
申告の際、控除できない葬儀費用を含めて申告してしまうと、再度税務署に修正申告をし、相続税を追加で支払わなくてはいけなくなる場合もあります。葬儀費用が高額になる場合には追加で支払う相続税も多くなりますので注意が必要です。
何が控除でき、何が控除できないか判断に迷うものもあると思います。
葬儀費用が控除対象になるかどうかお困りの方は税理士にご相談ください。
税理士法人FLAIRでは、相続税の申告や、相続に関する税務関係の相談等も承っております。
相続税の申告や相談等について、会計事務所をお探しの方は、ぜひお気軽にご相談ください。