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2022.06.01
相続税の税務調査とは?対象者の選定はどのように行われるのか?
今回は、相続税の税務調査の対象になりやすい人やどのように選定しているのかなど、相続税の税務調査についてお伝えいたします。
相続税の税務調査とは、相続人から提出された相続税の申告内容に記載ミスや不正がないかなど、申告内容を詳細に税務署がチェックし、疑念があるなどした場合に税務署の調査官が相続人に対して状況の確認と実地調査を行ったりするものです。
税務調査には「任意調査」と「強制調査」があります。
「任意調査」
任意調査とは、その名の通り任意で行われる税務調査です。一般的に税務調査といえば、この任意調査のことを指します。
任意調査は事前に通知があり、納税者の同意に基づいて行われます。任意とはいえ、調査を拒否することはできません。
病気やけがによる入院や身内の不幸などやむを得ない事情がない限り、調査に応じることが適切です。
任意調査は、調査官が自宅を訪問して実地調査となることが原則ですが、電話での聴取や相続人が税務署を訪問して必要事項を確認するという、簡易な接触で調査が終わる場合もあります。
「強制調査」
強制調査は、任意調査のような事前通知も無く準備期間もなく、裁判所の令状を得た国税局査察部(通称マルサ)により強制的に行われる調査で、不正や脱税が疑われる納税者に対して刑事事件として立件することを視野に入れた調査となります。
相続税の税務調査では任意調査になるケースがほとんどですが理由もなく任意調査を拒むと、違法行為をしているのではないかと疑われ、任意調査から強制調査に切り替わる可能性もあります。
税務調査率は、個人課税調査 約2%、法人課税調査 約3%ですが、相続税調査は、約25%と高い数字になっています。 相続税申告の遺産総額の平均値が約2億5千万円ですので、財産が3億円以上あるようなケースでは、一般的に税務調査が来る確率が高くなります。 なお、相続財産が、5億円以上と見込まれる事案については、特段の疑義がなくても、とりあえず調査となる可能性が高いです。
調査のおおまかな流れとしては以下のようになります。
1.税務署からの事前通告
2.税務調査
3.事実関係の確認
4.指摘事項に回答
5.調査結果の報告
6.修正申告
調査当日、税務署の調査官は、最低2人で相続人のところを訪問します。 午前中は主に調査官からの質問があり、故人の職業、収入、財産の状況などを聞かれるほか、相続人についても同じ内容の質問があります。午後は主に預金通帳や金庫などの確認が行われます。 実地調査はほとんどの場合、夕方5時には終了しますが、2日以上にわたって行われるケースもあります。
相続税の申告において、財産の漏れの疑いがある場合は、税務署は、調査を行うことがあります。それでは、税務署はこの財産の漏れをどのようにして見抜いているのでしょうか。それは、KSKシステムによるものです。
KSKシステムとは、KOKUZEI SOUGOU KANRI(国税総合管理)システムの略称であり、全国の国税局や税務署をネットワークで結び、納税者の申告状況や納付情報を一元的に管理するものです。
このシステムには、過去の税申告関連のデータが全て蓄積されており、税務調査対象の選定に利用しています。
相続税に関しては、被相続人の死亡の事実は、市区町村役場からの通知が税務署に入ります。そこで税務署はKSKシステムを使って過去の申告データ(所得税、贈与税など)を調べ、収入が多かった方や不動産所得のあった方などの相続人あてに相続税の申告案内を送付します。
そして、相続税申告を審査する際、被相続人の収入や資産(不動産評価も含む)から、明らかに相続税額が低いと評価されると相続税調査の対象になります。
主に税務調査の対象になりやすい人は以下のとおりです。
1.税理士に依頼しないで相続税の申告書を作成した人
専門家である税理士が関与していない申告書は、申告書の内容に漏れがあったり、不備がある可能性が高いことから、調査対象になりやすい傾向があります。
2.相続税の申告をしていない人
申告の必要があるにもかかわらず申告をしていない無申告の人。
税務署は所得税の申告書などから賃貸物件や不動産を持っていることは把握しています。そのため、本当に申告が必要ないかなど調査することを目的に税務調査対象となるケースがあります。
また、配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用して相続税が0円となる場合、相続税の申告が必須となります。このケースの場合は無申告となります。
3. 相続財産の規模が大きい・納税額が高い富裕層
先ほどご説明したとおり、税務署は、調査対象を選定するためのKSKシステムに情報を蓄積しており、富裕層の不動産購入履歴、株式の取引、給与データなどを把握しています。
そのデータをもとに実際の申告書とデータを比較し、相続した財産に差額が生じている場合や、特に疑わしいことがなくても税務調査が行われるケースがあります。数億円もの財産がある場合、控除額の計算ミスや相続財産への算入漏れの可能性が高まるためです。 また、相続税は累進課税を採用しており、相続財産が大きくなるほど追徴税額が大きくなるため、税務調査の対象となる可能性が高まります。
不動産、預金、株式、生命保険等について、相続税調査前に、税務署はすでに確認しています。
不動産の相続登記は、法務局で行いますが、税務署は、法務局で行った登記情報は把握できるようになっています。
預金や株式等については、税務署は、(本人名義のみならず、家族分も含め)銀行や証券会社に照会をし、かつ、過去にさかのぼって、入出金や売買の履歴まで確認しています。
生命保険についても、税務署は、本人名義の生命保険のみならず、家族全員がどのような保険に加入しているのか、故人が保険料を負担してないか等、確認しています。
なお、実地調査で、現金、金地金等の財産漏れを把握した事例もあります。
相続税の税務調査について、様々な視点でお伝えいたしました。
税務署の情報収集は多岐にわたります。
税務署も無作為に調査先を選定しているわけではなく、上記のような事前調査を入念に行い、財産の計上漏れがありそうな可能性があるところを調査先に選定しています。
税務調査のリスクを下げるためにも、相続に詳しい税理士に依頼をして正しく申告をすることが重要となります。
また、税務調査の結果も、税理士の調査対応で変わるため、税務署に対し徹底的に交渉できる税理士に依頼する必要があります。
税理士法人FLAIRでは、相続でお困りの相続人の皆様のお手伝いをさせていただいております。いつでもお気軽にご相談ください。