消費税が8%に増税されてから早くも2ヵ月近くが経とうとしています。
増税前や直後は様々なメディアに取り上げられていましたが、2ヵ月近く経った今、どういった現象が起きているのでしょうか。
消費増税後、スーパーやコンビニで金額をチェックしながら商品を手に取ったけれども、レジでお金を払う時にそれが税抜金額だと気付いて思っていたよりも多く小銭を出さなきゃいけなくなった…という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
値札等の税抜表示は、今後の10%増税も睨み値札の張り替えなどの事業者負担を軽減するため、消費者の誤認防止措置を前提に認められた措置になります。
しかしながら、商品の税込総額表示にすっかり慣れてしまった消費者にとって、税込表示と税抜表示が混在する今の状況に“誤認”させられることも少なくないと思います。
これに関しては最近の米ハーバード大学の研究で、税の表示方法によって消費者の消費行動が変化するということが明らかになっているようです。
その研究では、通常税抜き表示となっているスーパーで、一部の商品に通常の税抜き価格と併せて税込み価格を付け加えた表示をすると、その商品の売上高は平均して8%減少するという結果が発表されています。これは、「税込み価格の表示」という誤認防止措置によって、必要以上に消費者が価格に敏感になるということの表れなのだと思います。
一方で、価格転嫁はどのようになっているでしょうか。
各種調査によれば価格への転嫁は順調に進んではいるようですが、この価格転嫁が需要に与える影響は商品によってまちまちで、事業者によって対応が分かれているのは大変興味深いです。
例えばマクドナルドではハンバーガーなどの一部商品を、牛丼の「すき家」では牛丼を4月以降10円~20円程度値下げしています。こういった同じお店の中でも価格帯が低い商品は価格を下げたときの需要の伸び率が高いため、価格転嫁をなるべく抑えることで合理的な価格差別戦略を行うことが有益と考えられているようです。
その一方で、増税分以上に価格が上昇しているものもあります。トイレットペーパーや洗剤などの日用品などが代表的です。これは前々から原材料が上がっていたにもかかわらずなかなかそれを価格に転嫁できずにいた状況だったのが、増税を機にその分も転嫁したものと考えられます。
つまり、消費税が5%→8%となれば、価格もそれだけ上昇させるのが通常ですが、これにより今まで100個売れていたものが90個になるのか、80個になるのか、需要がどれだけ減るかというのは現実には一律ではなく、商品によって異なります。
売上は単価×数量となりますので、単価が上昇したことで需要(数量)が減ると、そのバランスによっては全体としての収益が減ってしまうことも考えられます。
それであれば単価自体を増税分よりは下げて売上数量の減少を食い止めようとするのは事業者としては当然の行動です。
政府が想定する「転嫁は完全に行われるべき」という考えを実行するのは現実にはなかなか難しいようです。
このように、一言で消費増税と言っても様々な事象が絡んでくるため、いくら法律で消費増税の完全な価格転嫁を促しても、誤認防止措置を促しても、やはり現実は一筋縄ではいかないということがわかります。
消費税も大事ですが、日本全体としての生産性を上げるための施策などについても今後注目していきたいと思います。