どんな場合に必要?手続き面は?源泉徴収の対象となる報酬のあらまし
2022.03.16
【外れ馬券は経費となるか?】
競馬の払戻金について、外れ馬券が経費として認められるかどうかという話題を以前にも取り上げましたが、昨日10日、一審二審に続き最高裁においても経費として認めらるとの判決が確定しました。
この機会に改めてご紹介したいと思います。
元会社員のAさんは、馬券の自動購入ソフトに独自の条件設定や計算式を加え、ネット上で馬券を大量購入していました。その購入額は28.7億円、払い戻し金額は30.1億円(!!)。
つまりAさんにとっての儲けは、その差額に相当する1.4億円ですので、これを所得と考えました。
これに対し、国税庁と検察は5.7億円の脱税としてAさんを訴えました!
Aさんはたまりません。なにせ儲けは1.4億円、5.7億円の税金を課されたら4.3億円の赤字であり、とてもじゃないが納得できません。当然ですが裁判で争うことになりました。
なぜこのような主張の相違が生じたのでしょうか。
この話のポイントは、馬券の払い戻しが「一時所得」と「雑所得」のいずれに該当するものか、という点にあります。
国税庁は所得税基本通達にて、「競馬の馬券の払戻金」を「一時所得」に分類しており、この場合「収入に直接要した金額」、つまりこの場合では当たり馬券の 購入費用しか経費として認められません。つまり払い戻し金額30.1億円から当たり馬券の購入費用1.3億円を差し引いた28.8億円が所得の額というわ けです。これに課税された税金が5.7億円。
これに対しAさん側は、この払戻金は「一時所得」ではなく「雑所得」であると主張しました。「雑所得」であれば幅広く経費が認められ、外れ馬券も費用として算入できる、というわけです。つまり前述のとおり、所得は1.4億円。
結局、一審大阪地裁、二審大阪高裁に続き、最高裁においてもAさんの主張が認められ、「外れ馬券は経費」ということが確定しました。
所得税法では「一時所得」を「営利を目的とする継続的行為以外」と定めていますが、今回のケースは通達にもかかわらず、その実態から「営利を目的とする継続的行為による所得(つまり「一時所得」に当てはまらない)」として認められたのです。
今後の通達の位置づけに少なからず影響を与えるものとして、注目すべき事案と言えます。
とはいえ、Aさんのように独自のソフトを駆使して全国のほぼ全てのレースに賭けるという、証券トレーダーさながらの購入方法は極めて特殊であり、このようなケースはあくまで例外とのこと。今後も大半のケースは経費として認めらません。
大当たりを夢見て外れ馬券をかき集めても、通常は何の役にも立ちません。そもそも、そう簡単に大当たりはでませんが・・・。