どんな場合に必要?手続き面は?源泉徴収の対象となる報酬のあらまし
2022.03.16
早いうちに子や孫に財産を分けてやりたいと考えています
早いうちに子や孫に財産を分けてやりたいと考えています。教育資金や子育て資金、住宅取得資金などの非課税が話題ですが、子や孫に該当する者がいません。なにか良い方法はありませんでしょうか。
ご本人が60歳以上で、お子様やお孫様が20歳以上であれば、贈与税額が軽減される相続時精算課税制度を適用することができます。
贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つがありますが、一般的には「暦年課税」により課税されるのが通常です。
暦年課税の場合は、贈与を受けた個人が、その年中に取得した贈与財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を控除し、その残額に最高55%の税率が課せられます。
例えば同年に父から1,000万円、母から1,000万円の贈与を受けた場合は、合計2,000万円から110万円を控除し、残った1,890万円に超過累進税率を乗じて計算した585万円が、その年の贈与税額となります。
これに対し相続時精算課税の場合は、届出をした贈与者(特定贈与者)ごとに2,500万円までの特別控除額があります。これを超えた部分については贈与税が課せられますが、税率は20%と暦年課税にくらべて低い税率となります。
例えば同年に特定贈与者である父から1,000万円、通常の暦年課税として母から1,000万円の贈与を受けた場合は、父からの贈与分1,000万円は特別控除により0円となり、母からの贈与1,000万円については通常通り110万円を控除し、残った890万円に超過累進税率を乗じて計算した177万円だけがその年の贈与税額となります。
相続時精算課税の適用者は要件さえ満たせば数の制限はありませんので、もし母についても相続時精算課税を適用すれば、父からの贈与だけでなく、母からの贈与1,000万円についても特別控除により0円となり、贈与税は発生しません。
なお翌年以降ですが、特別控除額は、2,500万円から1,000万円を差し引いた1,500万円となります。また特別控除額を使いきった場合は、贈与のたびに贈与財産の価額に20%の税率を乗じた贈与税が課せられることになります。さらに一度相続時精算課税を適用するとその後の撤回はできませんので、この点もご注意ください。
もうひとつの利点があります。
贈与財産については、贈与したご本人が亡くなった場合にあらあためて相続税の計算がしなおされることとなります。相続税の税率(6億円超に対し最高税率55%)は贈与税の税率(3,000万円超に対し最高税率55%)より低く抑えられていますので、相続税で再計算されると多くの場合は贈与税額控除の規定により税額が軽減される結果となります。
しかし暦年課税の場合は、相続開始前3年以内の贈与しか、その対象になりませんので、それ以前の贈与税については税額控除の規定が適用できません。これに対し相続時精算課税の場合は、届出をした年以降の贈与のすべてがその対象になります。さらに、相続税の計算の結果によっては贈与税が還付される場合もあります。
このように相続時精算課税は、子や孫への円滑な資産の移転が可能となる制度です。
ただし毎年少しづつ財産を移転したい、という場合は暦年課税の110万円控除をうまく使う方法が適しています。一度相続時精算課税制度を適用すると、この方法が使えなくなるので相続にいたるまでの資産移転計画を慎重に検討する必要があります。
円滑な財産移転をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。