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2022.06.01
「消費税転嫁対策特別措置法」とは
14日、公正取引委員会は住友不動産株式会社に対し、消費税転嫁対策特別措置法の規定に違反する行為があったものとして、同社に対し勧告を行いました。
「消費税転嫁対策特別措置法」とはどういうものでしょうか?
あまり身近ではない法律ですが、この法律自体が施行されたのは、平成25年10月1日。平成26年4月の消費税の5%から8%への増税があったタイミングです。法律の目的は、「消費税率の引上げに際し,特定事業者による消費税の転嫁拒否等の行為を迅速かつ効果的に是正するための特別措置など,所要の法整備を講ずることにより,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保すること」つまり、消費税を引き上げたことにより、立場の弱い中小企業が不利益となることを法律で禁止したり、消費者に誤解を与えるような表示をすることを防止するための法整備をすることで、消費税の増税をスムーズに行えるようにするというものです。
2年後の平成31年10月1日から消費税は10%に増税されることが予定されており、それに伴ってこの法律も平成33年3月31日まで延長されています。
この法律は、
第1 消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置
第2 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置
第3 価格の表示に関する特別措置
第4 消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置
の4つで構成されていますが、今回の勧告は「Ⅰ 消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置」によるものです。
簡単に言うと、立場を利用してその増税分を購入価格に転嫁することを、減額させたり、他の部分で増額分の費用負担をさせたり、という行為で拒否することを法律で禁止するものになります。
この、「Ⅰ 消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置」の対象となるのは、
特定事業者(転嫁拒否等をする側)
…1大規模小売事業者,2特定供給事業者から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者
特定供給事業者(転嫁拒否等をされる側)
…1大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者,2資本金等の額が3億円以下である事業者,個人事業者等
とされています。
また、禁止される行為は下記の4つです。
① 減額
本体価格に消費税分を上乗せした額を対価とする旨契約していたが,消費税分の全部又は一部を事後的に対価から減じること
② 買いたたき
原材料費の低減等の状況変化がない中で,消費税率引上げ前の税込価格に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定めること
③ 商品購入,役務利用又は利益提供の要請
消費税率引上げ分を上乗せすることを受け入れる代わりに,取引先にディナーショーのチケットを購入させること
④ 本体価格での交渉の拒否
本体価格(消費税抜価格)で交渉したいという申出を拒否すること
⑤ 報復行為
転嫁拒否をされた事業者が,①~④の行為が行われていることを公正取引委員会などに知らせたことを理由に,取引の数量を減らしたり,取引を停止したりするなど,不利益な取扱いをすること
今回問題となったのは、本来消費税率が8%が適用される工事について、消費税5%で算出した工事代金のまま支払ったという違反行為で、これは上記の例でいうと「買いたたき」に該当します。今後同様の行為を行わないことを取締役会の決議で確認すること、消費税転嫁対策特別措置法の遵守についての、行動指針の作成、定期的な研修及び監査を行うといった勧告が行われました。
消費税の増税に伴い生じる不利益を防止する措置法があることを今回はご紹介させていただきました。
内閣府が設置している「消費税価格転嫁等総合相談センター」という相談窓口もあるようですので、事業者の方には、こんな制度があったな、ということを覚えておいていただければ幸いです。