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2022.06.01
令和元年改正の新制度「特別の寄与」とは?
スタッフの箱田です。
総務省統計局の人口推計によると、2020年9月の高齢者(65歳以上)が総人口に占める割合(高齢化率)は、28.7%となり、人口の4人に1以上が高齢者(65歳以上)となっています。
1950年時点はで5%に満たなかった高齢化率は、1985年には10.3%、2005年には20.2%と急激な上昇傾向にあり、2060年には約2.5人に1人が65歳以上になるとする予測もあります。
そのような時代だからこそ、高齢者を支える、介護などを行う周りの方々の存在がとても重要になります。
相続においても、そのような被相続人の療養・介護等を行った相続人の貢献を遺産分割に反映させる「寄与分」という制度があります。
例えば、被相続人である父の相続人が長男と次男の2人の場合、そのうち長男が被相続人の療養・介護を長年にわたって行い、次男は何もしていなかったと仮定します。
そのケースで、法定相続分で相続した場合は、それぞれが同額の1/2ずつを相続しますが、この場合、長年貢献した長男と、何もしてこなかった次男の相続する財産が同じになるため、長男から不満が出るケースがあります。
上記のようなケースについて、相続人間の実質的な公平を図ることを目的として、療養・介護等を行った相続人の貢献した分を考慮して、より多くの財産を相続させることを主張できる制度が「寄与分」の制度です。
上記のケースでは、長男が長年貢献した分を考慮して、長男により多くの財産を相続することを主張し、それが認められれば、長男は次男より多くの財産を受け取ることができます。
一方で、従来の寄与分の制度では、相続人でない親族が同じく長年介護を行っていた場合は、相続人を対象とした寄与分の要件に当てはまらず、相続財産の分配を受けることができませんでした。
例えば、上記と異なり、長男が既に亡くなっていて、長男の妻が被相続人(父)の療養・介護等を行っていたケースは、従来の「寄与分」の対象になりませんでした。
このような不公平を是正するために、民法の相続法が改正され、「特別の寄与」という制度が令和元年から施行されました。
「特別の寄与」では、療養介護等を行った被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対し、寄与に応じた金銭の支払を請求できることになりました。
「特別の寄与」には、主に下記等の要件があります。
・特別の寄与であること
・被相続人の親族であること(相続人、相続放棄者、相続欠格者、被排除者を除く)
・被相続人に対し、無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと
・労務の提供によって被相続人の財産が維持又は増加したこと
「特別の寄与」の場合でも、対象は「親族」とされているため、「親族」以外が療養・介護等を行った場合は認められません。
また、療養・介護の提供が「無償」で提供されたことなど、従来の寄与分の制度とは異なる要件がある点等にも注意が必要です。
なお、「特別の寄与」を親族が主張した場合でも、遺産分割手続き自体は従来と同じく相続人のみで行います。
そして、特別寄与者は相続人に対して、金銭の支払を請求し、当事者間の協議により寄与分を決めます。
当事者間の協議がまとまらない場合は家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することになります。
「特別の寄与」は、相続人への請求や協議、場合によっては裁判所への請求や請求が認められることが必要であり、
高齢者を介護する親族の貢献が、手続き無しに自動的に報われる制度では、決してありません。
しかし、高齢化が進む日本で、親族の介護を行う方が増えている時代だからこそ、知っておくべき制度ではないでしょうか。
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