従業員の資格取得費用等を負担した場合の取り扱い
2022.06.01
役員退職金を現物支給する場合のメリットや税金について解説!
役員に対する退職金は高額になることが多く、資金が少なくなっている会社に関しては現金ではなく物品や不動産などで支給を検討するケースが増えています。
今回は、役員退職金を現物支給する場合のメリットや税金について解説します。
現物支給とは、現金の代わりに物品や権利などの経済的利益をもって支給する方法です。
具体的には、以下のようなケースがあります。
・法人名義の生命保険契約を個人名義に切り替える
・法人名義の土地、建物、車両などの固定資産を個人名義に切り替える
・役員貸付金を免除する
これらの方法を活用することで、会社は現金を用意せずに退職金を支給することが可能になります。
役員退職金を現物支給する場合のメリットをいくつかご紹介します。
現物支給を行うことで、会社は手元の現金を確保したまま退職金を支給できます。特に、資金繰りが厳しい場合や、キャッシュフローを維持したい場合に有効です。
現物支給によって、固定資産が減少し、現金を保持できることで流動資産比率が向上します。
流動資産比率(流動比率)は、
流動資産 ÷ 流動負債 × 100
で計算され、企業の短期的な支払能力を示す指標です。
一般的に、流動比率が100%以上であれば短期的な支払能力があるとされ、200%以上であればより健全と評価されます。
この改善により、金融機関からの信用力向上や資金調達のしやすさにつながる可能性があります。
現物支給の対象となる資産が含み益を持つ場合、役員は現金支給よりも実質的に高い価値の資産を受け取ることができます。
代表的な例として、生命保険、不動産、自動車などがあります。
これらに共通するのは、
・会社名義から個人名義に変更すること
・支給時の評価額より、換金時の金額が大きくなる可能性があること
例えば、不動産の帳簿価格が1,000万円でも市場価値が3,000万円ある場合、現金1,000万円を受け取るより有利になることがあります。
ただし、税負担や手続きが発生するため、事前のシミュレーションが重要です。
現物支給を行う際には、以下の税務上の注意点があります。
役員退職金を支給する場合は、原則として現物支給することを決議した株主総会議事録が必要になります。もし現物支給することを決議した内容の記載がない場合、金銭に代えて代物弁済したとみなされ、消費税の課税対象となってしまいます。
現物支給する資産の時価と帳簿価額との差額は固定資産売却益又は売却損として法人の益金又は損金となります。
また、役員退職金が過大であると判断された場合にはその部分は損金と認められません。
不動産の場合には所有権移転登記を行う際に
登録免許税・・・・課税標準×2%(内容によっては軽減税率が適用されます。)
不動産取得税・・・・・課税標準×3%~4%
がかかります。
さらに、退職所得控除を超える役員退職金の場合、所得税や住民税も課税されるため注意が必要です。
この場合さらに注意点があります。現金での支給では、会社が源泉徴収を行い、税金を差し引いた金額を支給しますが、現物支給の場合、現物資産のみを受け取るため、退職者自身が所得税および住民税相当額を用意して納付する必要があります。そのため、退職者にとっては、現物資産を受け取る一方で、税金を支払うための現金を別途準備しなければならない点に注意が必要です。
役員退職金の現物支給には、キャッシュフローの維持や財務体質の改善といったメリットがありますが、税務上のリスクや手続きの煩雑さも考慮する必要があります。
実際に現物支給を検討する際は、事前にシミュレーションを行い、メリットとデメリットを十分に確認することが重要です。
FLAIRでは、税務だけでなく、関連する業務についても幅広く対応しておりますので、ご相談があればお気軽にご連絡ください。