• 2022.04.27

路線価否認判決による相続税対策への影響

スタッフ伊藤です。

初夏の陽気となり、ゴールデンウイークの予定を楽しみに
していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
コロナ感染症の影響を受けて、ここ数年旅行を計画できなかった方も今年は
旅行へ行く計画を予定している方が多いかと思います。
感染に気を付けて、ゴールデンウイークを楽しんでください。

さて、本日は今後の相続税対策について影響をもたらすであろう判決についてお伝えします。

令和4年4月19日、相続不動産の評価額について、財産評価基本通達に沿った路線価評価額を否認し
不動産鑑定評価額で算出した相続税額の納税を求めたことに対して、相続人が上告。
相続人の上告は棄却となり、相続人の敗訴という判決が下されました。

事案について以下となります。

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【被相続人】
94歳の父(平成24年6月17日相続発生)

【相続人】
妻、長女、長男、二男、孫(養子縁組)

【相続不動産物件について】
甲不動産
購入日:平成21年1月30日
購入額:8億3700万円(6億3000万円借入)
路線価評価額:2億0004万1474円 A
不動産鑑定評価額:7億5400万円 a

乙不動産
購入日:平成21年12月25日
購入額:5億5000万円(4億2500万円借入)
路線価評価額:1億3366万4767円 B
不動産鑑定評価額:5億1900万円 b

いずれも被相続人(当時90歳である男性)が取得した。

上記物件に関して、相続人は路線価での評価方法にて
A.Bと評価したうえで相続税の申告書を提出したことにより相続税課税価格
の合計額は2826万1000円とし、基礎控除の結果、相続税は0円と申告とされていた。

この申告について税務署は、上記の不動産の購入及びその借入は、近い将来発生
することが予想される相続税の節税目的であり、物件購入がなければ相続税の課税価格の
合計額は、本来6億円を超えるものであったとした。

国税庁長官は、相続不動産価額につき、路線価による評価が著しく不適当であるとして
「評価通達6」※1により、路線価での評価ではなく、相続人に対して不動産鑑定士が鑑定した
評価基準により算定した鑑定評価額をa,bとして、相続税の総額を2億4049万8600円とするとし
更正処分及び賦課決定処分をした。

結果、この処分の取り消しを相続人らが求める事案である。

※1財産評価基本通達6項『伝家の宝刀』
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は
国税庁長官の指示を受けて評価する。

出典 令和2年(行ヒ)第283号 相続税更正処分等取消請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/105/091105_hanrei.pdf

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『裁判の経緯』
令和元年8月 東京地裁判決   国税勝訴
令和2 年6月 東京高裁判決        地裁の判決を維持
令和4 年4月 最高裁判所判決  国税勝訴

上記のように国税側の全面勝訴ということとなりました。
これは相続税の不動産による過度な節税に警鐘を鳴らす司法判断となったことは間違いありません。

国税の『伝家の宝刀』財産評価基本通達6項「総則6項」による
更正処分は、今後増加するであろうと予想されることから
相続税申告における実務判断及び相続対策をより慎重に行わなければなりません。
相続の際に不動産の評価額を路線価によって評価し、実際の不動産価格よりも
低い評価額となることを利用した節税対策はよく行われていますから
それ自体がよくないというわけではありません。
ただ、今回の事案は以下の状況から、だれがどう見ても過度な租税回避であろうと
思われる事案でありました。

・孫と養子縁組をしてすぐに物件を購入している。
・相続発生間近での不動産取得(90歳で年に2棟)
・借入金の完済予定日が購入者の余命を大幅にこえている
・融資をうけた銀行の貸出稟議書に相続対策のため不動産購入と記載されていた。
・相続後9か月後に一棟を売却している。

何事もやり過ぎはよくないということです。

相続対策は慎重に行う必要があります。
相続についてのご相談は、思い立ったが吉日、後に、こうしておけばよかったと後悔
しないためにも、ぜひ福島会計にお気軽にご相談ください。

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