• 2022.11.30

中小企業向け賃上げ促進税制と教育訓練費 ー 給与増加分の最大4割を税額控除できる上乗せ要件とは?

 

スタッフの箱田です。

円安や国際情勢等の影響による資源高などにより、食料品や光熱費など生活に身近な品目の値上がりが続いており、総務省が発表した2022年10月の消費者物価指数では、前年同月比で1982年2月(3.6%)以来40年8カ月ぶりの伸び率である3.6%上昇となりました。

一方で物価高が進む中、OECD(経済協力開発機構)の平均賃金の国際比較では、2021年は日本は34ヵ国中24位と他の先進国と比較して低水準にあります。

 

上記のような背景の中、中小企業全体として雇用を確保しつつ、積極的な賃上げや人材投資を促すことを目的とした「中小企業向け賃上げ促進税制」という制度があります。

この中小企業向け賃上げ促進税制は、全従業員への給与の総額を前年度比で一定割合以上増加した場合、給与増加分の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できるという制度です。

今回は中小企業向け賃上げ促進税制について、1.制度の内容、2.上乗せ要件である教育訓練費の範囲の2点を中心に紹介させていただきます。

 

1.中小企業向け賃上げ促進税制の内容

中小企業向け賃上げ促進税制では、雇用者全体の給与総額が前年度比で1.5%以上増加した場合、給与増加分の15%が法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できます。

さらに、以下の上乗せ要件に当てはまる場合には、それぞれ、税額控除できる割合が上乗せされます。

上乗せ要件1:雇用者全体の給与総額が前年度と比べて2.5%以上増加した場合→税額控除率が15%上乗せされます。
上乗せ要件2:教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加した場合→税額控除率が10%上乗せされます。

また、上記の要件1と要件2を両方満たす場合には、上乗せ要件を併用することができ、この場合は40%(※)の税額控除を受けることができます。
※15%(通常要件)+15%(上乗せ要件1)+10%(上乗せ要件2)=40%

 

2.上乗せ要件である教育訓練費の範囲

上乗せ要件2の教育訓練費は、仕事に必要な技術・知識を習得・向上させるための費用で、例えば、下記のような費用を言います。

・社内研修に招聘した外部講師に支払った報酬や法人が負担した旅費交通費
・研修、セミナーの参加費、受講料
・教育訓練のために使用した施設・備品の使用料

なお、教育訓練費が上乗せ要件に当てはまるかどうかは、①教育訓練の対象者と②費用の範囲が共に要件を満たすものである必要があります。

 

まず、①教育訓練の対象者は、法人又は個人の国内雇用者に限られます。

そのため、法人の役員や個人事業主や使用人兼務役員、これらの人の親族などが教育訓練を受けた場合は、この制度の対象外となります。

さらに、法人の内定者など、入社前の人が教育訓練を受けた場合も対象者にはなりません。

 

次に②費用の範囲として、例えば、下記のような費用は賃上げ促進税制の教育訓練費の対象とならないため、注意が必要です。

・法人等がその使用人又は役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金等
・教育訓練等に関連する旅費、交通費、食費、宿泊費、居住費(研修の参加に必要な交通費やホテル代、海外留学時の居住費等)
・福利厚生目的など教育訓練以外を目的として実施する場合の費用
・法人等が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費、維持管理費等)
・法人等の施設等の取得等に要する費用(当該施設等の減価償却費も対象となりません。)
・教材等の購入・製作に要する費用(教材となるソフトウエアやコンテンツの開発費を含みます。)
・教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金、保険料等

 

また、教育訓練費による上乗せ要件の適用を受けるには、教育訓練費の時期・内容・受講者等を記載した明細書の作成及び保存も要件とされています。

 

上記の通り、賃上げ促進税制は要件や自社の状況を検討したうえで、正しい情報を元に判断を行うことが重要になります。

そのため、賃上げ促進税制の活用を検討されている場合は、専門家である税理士に相談されることをおすすめいたします。

FLAIRでは、賃上げ促進税制をはじめ、お客様に合わせた税務に関するノウハウや情報の提供を行っております。
顧問税理士をお探しの方等お気軽にご相談ください。

 

参考文献:
経済産業省「中小企業向け 賃上げ促進税制 ご利用ガイドブック」

※中小企業向け賃上げ促進税制の適用できる事業年度は、法人の場合は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの期間内に開始する事業年度、個人事業主の場合は、令和5年および令和6年となっています。

令和3年4月1日~令和4年3月31日までの期間内に開始する事業年度(個人事業主は令和4年)については、下記を参照ください。

経済産業省「中小企業向け 所得拡大促進税制 ご利用ガイドブック」

弊社ホームページ「給料を増やして税額控除を受ける~所得拡大促進税制~」

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